皆さん、こんにちは。最近、介護関係の記事をよく書きます。副業とはいえ色々な方たちと接する機会が多く、人として大切なことを学ばせていただいているように感じる今日この頃。忙しい日々の中でも学んだことや感じたことを忘れたくなくてここに記しているのです。そして今日も、副業の有料老人ホームの夜勤の一コマについて書きたいと思います。
最近はアノおじいちゃんと仲良しです
「アノおじいちゃん」・・・って誰やねん!って感じですね。
以前、↑↑↑に書いたおじいちゃんのことです。まぁ、仲良しと言っても夜勤なので、あちらはほとんど眠っていてコミュニケーションをいっぱいとって楽しく過ごしているわけではありませんが。夜は起きていられると困りますしね、特に重度な認知症の方は・・・。
先日の夜勤のさらに前日の真夜中、どうやらベッドからずり落ちてしまったらしいんです。
担当夜勤さん曰く「仕事に行く」「畑に行きたい」と言っていたとか。他のフロア担当夜勤者を応援に呼んで一緒におじいちゃんを抱えてベッドに戻したらしいのですが、朝まで意味不明言動が続き再びベッドから転落しそうな危険な様子だったみたいです。
これまでの私の夜勤中も「仕事しなきゃ」と言って起きようとすることが度々ありました。その都度「まだ夜だから仕事の時間ではないですよ」と伝えて再入眠を促しましたが、この夜はいくら言い聞かせても何度も起き上がろうとして大変だったそうです。
で、次の日の夜勤で私が担当したわけですが、2時ごろから突然おじいちゃんがまた起き上がろうとし始めたのです。
おじいちゃん「起きるよ。仕事に行かなきゃ」
私「いまは夜中ですよ。お仕事の時間ではないのでもう少し寝ていてください」←布団をかけて寝かしつけようとする
おじいちゃん「いやだ。仕事をするんだ」
私「(あらら、いつもと違う。昨日と同じパターンだ)でもみんな寝ていますよ。お仕事は日中にしましょうよ」
おじいちゃん「そんなこと言ってもしょうがないじゃないか。やらなきゃダメなんだよ。関係ないよ」←布団を振り払い再度身体を起こす
このままでは昨夜に引き続きベッドからおじいちゃんが転落してしまう可能性があります。
おじいちゃんが起きだす前に読んでいた漫画
ところで、おじいちゃんが起きだす前はとっても平和でした。
私が受け持ったフロアは皆寝静まっており、一通りその時間帯の仕事を終えていた私はあまりの暇さに休憩室に置いてあった漫画を手に取り廊下の椅子に座って読んでいました(ナイショよ)。
誰が持ってきたか分からない介護情報誌の横に置いてあったその漫画は、やはり介護に関するものでした。
これこれ。介護福祉士の資格を持つ作者が訪問介護、デイサービス、老健など、高齢者福祉サービスでの仕事を通じて知り合った様々な利用者さんとのエピソードを親しみやユーモアを込めて描いた短編漫画集です。
ほのぼのしたお話がいっぱいで、読んでいてほっこりします。
一人一人の利用者さんやそのご家族はアクティブさん、おっとりさん、怒りんぼさん、無口さん、重度の認知症さん等々、色々な方(表紙に描かれている人たち)が登場します。対応が難しい方も当然いて、それでも若い主人公(作者)は戸惑いながらも一生懸命同僚と一緒に誠心誠意応えようとします。
そうすることで次第に見えてくる利用者さんやご家族の過去、経験、想い。戦争や震災、家族や友人との辛い別れ。長生きすることによる罪悪感。様々なものを抱えて頑張って生き抜いてきた皆さん。
人当たりがきつい人だなぁ(困)、なんでこんなことしちゃうの~(泣)と思わず嘆いてしまうような相手も「そうか、そんな理由があったんだね」と理解すると、不思議と優しい気持ちでニコニコと接することができるようになる、そんな心温まるストーリーが満載で時にクスリと笑えるオチもついていたりします。
福祉業界では虐待防止研修が盛んです
虐待はダメです。絶対に。
高齢者分野や障がい者分野など、分野を問わず福祉業界では虐待ゼロを目的に虐待防止や人権擁護に関する研修が盛んにおこなわれています。
そこでは虐待の引き金になりやすい利用者さんの問題行動について問題行動に着目すると共に、その行動自体には表れない原因に目を向けましょうというお話が必ずと言っていいほどあります。
問題行動の足元にはそれを起こす本人でも伝えられない辛さや苦しみなど、目には見えないものが実はたくさん隠れているのですと。それを理解したうえで問題行動と向かい合いましょうと。
色々な研修で何度も何度も言われてきました。
正直、「ハイハイ。またその話ですか~」と思って聞き流していました。だっていざ問題行動が起きた際は、利用者さんや患者さん、自分自身の身の安全を守ることや事故防止に必死で、悠長に目に見えない隠れた背景なんて考えている余裕はないんですもん。目の前に広がる光景に対応することで精一杯です。
でも今回、真夜中におじいちゃんが起き上がろうと頑張り始めたとき、直前に眠い目をこすりながら「介護のオシゴト」を読破して一人静かに感動していた私は、「このおじいちゃんにはどんな背景(過去)があるんだろう?」という疑問を感じていました。
おじいちゃんの人生
「起きるよ。仕事に行かなきゃ」「いやだ。仕事をするんだ」「そんなこと言ってもしょうがないじゃないか。やらなきゃダメなんだよ。関係ないよ」
他の夜勤者さんの記録を見ても「仕事に行きたい」と訴えているとしょっちゅう書かれていたおじいちゃん。おじいちゃんに殴られそうになった2度目の夜は「リハビリをしなきゃ」と何故か焦っていたおじいちゃん。
私「・・・・・・・もうそんなに頑張らなくていいんですよ」
おじいちゃん「やらなきゃいけないんだよ」
私「大丈夫ですよ。もうそんなに仕事しなくていいんですよ」
おじいちゃん「そんなことないよ」
私「だっていままで散々頑張ってきたんでしょう?病気になって入院して、それでも麻痺が残って。もう年だしこれ以上無理しないでくださいよ!もっと身体、大事にしてくださいよ」
私と知り合う前におじいちゃんがどんな生活をしてきたのか、ご家族との関係はどんなだったのか、そもそも家族はいるのか・・・私は何も知りません。
でもこのときの私は、おじいちゃんは何かの為に自分の身体に鞭を打ってずっと頑張ってきたのではないかと不意に思ったのです。
何にも本当は分からないし根拠もない私のこの言葉に、おじいちゃんはきっと大して反応してくれないだろうけど・・・・
でも
おじいちゃん「なんでそんなこというんだよ。優しくしないでくれよ」
起き上がろうとする力を抜き、私をジッと見ています。
詳しいことは何も分かりませんが、おじいちゃんに何かが伝わったみたいです。
私「もうそんなに無理して稼ごうとしなくても大丈夫なんですよ。十分稼いだんですから。あとは昼にゆっくりと仕事(デイサービスの活動=仕事と思っているみたいなので)をすれば大丈夫なんですよ」
おじいちゃん「そうなの?」
私「そうですよ。だから安心して眠ってください。お仕事行く時間になったら起こしに来ますから」
そう伝えるとおじいちゃんは眠りにつきました。そして朝まで起きあがろうとすることはありませんでした。
朝、起こしに行くとおじいちゃんは目を開けて黙って天井を見ていました。
おじいちゃん「なんだか分からなくなってしまいました」
無表情にぽつりと呟くおじいちゃん。
私「私は少しは分かるようになったかな・・・」
おじいちゃん「なってるよ」
私「そっか・・・」
不思議ですが、おじいちゃんは私が言わんとしていることについてはお見通しみたいなんです。私のつたない想像力では分からないくらいのたくさんの経験を重ねたから色々分かってしまうのかな。
そしていまは認知症が進行していることを感じながら、それに抗えない苦しさと静かに向き合っているのかもしれません。
まとめ
医療や福祉の世界で働き始めて早15年。具体的な方法は分かりませんが、今になってやっと問題行動を引き起こす目には見えないものを見つめる重要性が分かったような気がします。
(我ながら遅いなぁ)
「介護のオシゴト」の中にあるいくつものストーリーが私の心の中に沁みわたったことにより、これまでの積み重ねてきた多くの研修経験の中で伝えんとしていた真意に光を当てることが出来たからではないかと思うのです。
これからもしばらくは医療や福祉の世界で働いていくであろう私ですが、今回学んだことを忘れずに今後も前向きに頑張っていきたいと感じる今日この頃です。
多額の借金があっても人間腐ってはいけませんね。
私もいつか誰かに「もう大丈夫だからそんなに働かなくていいんだよ」って言われたいなぁ。
今回のお話は以上です。
今日も読んで下さりありがとうございました!